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このシンポジウムは日本の環境省と中国国家質量監督検験検疫総局(AQSIQ)との間で両国の再生資源貿易の現状や、制度理解を深めるために開催されてきました。
第一回目の上海、二回目の東京に続き、杭州で開催された本シンポジウムは、AQSIQの主催のもと、日中商品検査や中国浙江検験検疫局センターが共催、日本の環境省が協力という形で開催され、日中両国の民間企業等約120名が出席しました。このシンポジウムにおいて、日本のリサイクル業界を代表し、日中間の再生資源貿易の現状と課題について、弊社の古澤が発表を行いました。発表内容の全文は以下の通り。
【 発表内容の全文 】 皆さん、こんにちは。只今、ご紹介頂きました協栄産業の古澤でございます。
本日は、「第三回中日廃棄物原料貿易と検験検疫セミナー」が、かくも盛大に開催されましたこと、誠におめでとうございます。また、第一回、第二回に続き、今回のセミナーにも参加させて頂き、心より感謝申し上げます。
今回、弊社のプラスチックリサイクルへの取組みに関して是非とも、話をしてほしいとのお言葉を頂きました。ご指名でございますので、甚だ僭越ですが、お話をさせて頂きます。
弊社は1985 年の設立以来、「分ければ資源、混ぜればゴミ」という理念の下、廃プラスチックを資源として最大限に有効活用できるよう、技術開発と用途開発に努め、循環型リサイクルシステムの構築と発展に努めて参りました。 当時、日本は大量生産・大量消費・大量廃棄のまっただ中であり、天然資源を持たない我が国にとってリサイクル産業の重要性は日増しに高まっておりました。そうした中で廃プラスチックを始めとする廃棄物原料を適正に処理し有効活用することで、限りある資源を子供たちに繋いでいくことが私たちの使命であると考えてきました。それが、弊社の循 環型リサイクルへの取組みの原点となっております。
それから、20 年以上経った現在も、限りある資源の枯渇に対する根本的な解決は図られておらず、大きな問題として私たちの前に立ちはだかっているのが現実です。そのような中、日本でも循環型社会形成の推進を図るための法体系が整備され、我々リサイクル業界も国の施策にのっとった取り組みを進めてきたところでございます。
ここで、中国と弊社の関わりについてお話させて頂きますと、貴国がWTO に加盟する前である2000 年12 月に、日中商品検査株式会社の孟社長の引率で、当時、廃棄物輸入の主管部門であった国家出入境検験検疫総局の王 鳳清副局長を団長に、税関総署、環境保護総局、地方の出入境検験検疫局の局長の皆様、総勢11名で弊社に来社された時に遡ります。
WTO 加盟を前にして中日間の適正な廃棄資源取引を進める法整備の一環として、日本のリサイクル工場視察にあたり、弊社工場をご指名頂いたことは、大変光栄に思っております。その際、王 鳳清団長から次のようなお言葉を頂戴したことが深く記憶に残っておりますので、ここでご披露させていただきます。
「中国はこれからの国家建設にあたり、天然資源の代替である使用可能な廃棄物の輸入として、石油に替わる廃プラスチック、パルプに替わる古紙、鉄鉱石に替わる廃金属の3 点を積極的に輸入していく方針である。しかしながら、再利用可能な資源であるはずの物が、それらを再利用していく過程で、我国の国内環境に悪影響を及ぼすようなことは、絶対に避けなければならない。
我国が必要とする物は、再利用可能な資源であり、他の先進諸国が必要としないゴミが適切な処理もされず、中国に持ち込まれることはあってはならない。廃棄物原料の輸入を進めていくうえで、環境問題は近代化を進める我国にとって極めて重要な課題であり、日本の産業界は、我国の安全、衛生、環境保護の基準を満たした上で輸出を心がけてほしい」というご挨拶でございました。
私はその言葉に大変感銘を受け、今日まで、それが中日間の取り組みに活かせるよう志して参りました。このことは、中日間の廃棄物原料貿易が拡大した今、さらに重要性を増しているのではないでしょうか。
次に、現在弊社がプラスチックリサイクル事業において注力している取り組みについて、お話させて頂きます。
現在取り組んでいることは、リサイクル技術の高度化によって高品質な再生原料を生み出し「物性」や「安全衛生性」などの点で石油由来の新品原料に近づけることで、今まで再生原料では展開出来なかった用途への利用を目指しております。
また、廃プラスチックをリサイクルすることの大きな意義がもうひとつあります。それは再生原料のCO2 削減効果です。
弊社は現在、企業の社会的責任の一貫として、再生PET原料のCO2 排出量の算定を第三者機関に依頼し、その結果、弊社の製造工程でつくられた再生PET原料は、石油由来の新品原料と比較して63%もの大きな排出量の削減効果があることが判明しました。具体的には弊社の場合、1㎏のPETボトルをリサイクルすると、およそ1 ㎏のCO2 排出削減につながるのです。地球規模でのCO2 削減が叫ばれる中、廃PETボトルのリサイクルはCO2 削減の効果的な一手法と言えるでしょう。
更に弊社ではその削減効果を高めるべく、国連で承認を受けた「中国河北省の風力発電プロジェクト」などで生み出された排出権(CER)を取得活用し、再生PET原料を製造する際に排出されるCO2 を、排出権でオフセットすることで、CO2 排出量を実質ゼロにした「カーボンニュートラル原料」の製造を開始致しました。
この取組みは日本のリサイクル業界初の試みで、低炭素社会構築が急務とされる中、環境配慮に熱心な国内外の企業と連携してカーボンフリー製品の開発に繋げていきたいと考えております。世界共通の課題としてCO2 の削減、低炭素社会の構築が求められる中、廃棄物原料の有効活用は環境負荷低減という観点からも益々重要になっていくものと思っております。
廃プラスチックを適正にリサイクルすれば、新品原料の替わりに使用可能であることを考えると、回収された廃プラスチックは、まさに毎日街から湧いて出てくる「都市油田」とみなすことができると思います。私たちは、貴重な天然資源を大量に消費することで、日々の生活を営んでおりますが、今後は限りある天然資源を、いたずらに浪費するのではなく、 「もったいない」という精神で廃プラスチックという「都市油田」をうまく活用することが中日両国に求められている共通の課題であると理解しております。
最後になりますが、中日間の廃棄物原料取引が、今後一層活発化し両国の発展に寄与していくことは間違いないと思います。廃棄物原料取引が拡大する中で、今回のセミナーを主催された国家質検総局と環境省の役割はますます大きくなりますが、今後ともご指導頂きますようよろしくお願いします。両国が互いに相手国の環境保護に配慮しながら廃棄物原料取引を行うことで、資源問題の緩和や低炭素社会の実現に貢献出来ることを確信しております。今後の中日間の益々の貿易振興と発展を祈念致しまして、私の発表とさせて頂きます。 ご清聴、有難うございました。
発表の後には満場の拍手を頂き、また中国政府から、「都市ゴミを『都市油田』と言い換えるのは新しい試み」とのコメントを頂きました。